誰もが活躍できる地域社会へ
岐阜県立ひまわりの丘第三学園/職業指導員 佐藤高彰さんオンダパーツの作業スペースでは、毎週水曜・金曜になると、製品の袋詰めやラベル貼りなどに取り組む障がい者の方々の姿が見られます。彼らは、関市の「ひまわりの丘第三学園」から職場体験に訪れている実習生。障がいのある方の「働きたい」をサポートする同学園とともに、オンダパーツがめざすのはどのような未来なのでしょうか。同学園の職業指導員、佐藤高彰さんにインタビューを行いました。
――――はじめに、ひまわりの丘第三学園様が取り組んでいる就労移行支援事業についてご紹介ください。
佐藤さん 就労移行支援事業は、身体や精神、知的機能、発達に何らかの障がいまたは難病がある方に対して標準24ヶ月を目安にさまざまな訓練を行い、一般企業への就職をサポートする福祉サービスです。ハンディキャップをお持ちの方のための職業訓練校というとイメージしやすいかもしれませんね。そして就労移行支援事業の中でも、各障がいに対応した支援を行っているのが、私たち「ひまわりの丘第三学園」です。
――――具体的にはどのような支援を行っているのですか?
佐藤さん 支援内容は事業所によって異なりますが、当事業所では障がいのある方一人ひとりの「働きたい」にお応えすることをめざし、基本的な労働習慣や仕事に関する知識・スキルの体得から、企業実習、履歴書の書き方、面接の受け方まで、さまざまなサポートを行っています。もちろん「就職したら終わり」ではなく、みなさんが長く働き続けられるよう、職場への定着支援にも力を入れています。そうした支援には、障がい者の方々の特性を理解した上で実習や雇用を受け入れてくださる企業様をはじめ、関係各所との連携が欠かせません。
――――オンダパーツとは2年ほど前からのお付き合いになりますね。
佐藤さん 当事業所が平成20年度から取り組んでいる就労移行支援事業について、オンダパーツさんが関心を寄せてくださり、事業所内で行う職業訓練の委託がスタートしました。さらに2015年の夏からは職場体験も受け入れてくださることになり、新工場の恵まれた環境で週に2回、6名ほどの利用者さんが実習させていただいています。いずれも地域の内職さんと同等の仕事、そして工賃をいただいており、利用者さんたちにとって大きな自信や就労意欲につながっていますね。
――――ひまわりの丘第三学園様との協業のきっかけは、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者・坂本光司先生の講演です。先生の講演の主題である「働く理由」「会社のあり方」を考えたときに、御事業所との協業などさまざまな方策を試みました。試みとしてのスタートでしたが、納品物の品質や、作業に取り組む利用者のみなさんの姿を見ると、御事業所が当社にとって大切なモノづくりパートナーであることを実感します。
佐藤さん 障がいがあるから働くことが難しいかというと、そんなことはありません。たとえば知的障がい者の方は一般的に、コミュニケーションや実用的な読み書き、計算、創意工夫などの点で苦手さが見られます。でも、決められた業務を定型どおりにこなせる真面目さや素直さなどの特性を活かせば、彼らが輝ける場所はたくさんあります。実際、オンダパーツさんの仕事で、驚くような作業量を正確にこなす利用者さんもいるんですよ。
――――ひまわりの丘第三学園では、利用者のみなさんがより作業をしやすいように、どのような工夫をされていますか?
佐藤さん 専任の職員を配置して、一人ひとりの個性を見極めながら作業指示を出しています。指示は抽象的ではなく、具体的に、明確に、繰り返し伝えることが大切なんですね。それから、「どうしたらもっとうまくできるか」についてもアドバイスやサポートをします。たとえば、透明の資材を重ね折りする作業では、目盛りを記した色付き台紙を治具に取り入れて、「ここまで折ったら完成」と視覚的にはっきり理解できるようにしました。また、毎回作業内容が実習にふさわしいかどうか、オンダパーツさんが配慮してくださることもありがたいです。
――――私たちも御事業所と協業することにより、手順の明確化など、さまざまな面で学ぶことができ感謝しています。オンダパーツでの職場体験が始まって、利用者さんに何か変化はありましたか?
佐藤さん 利用者さんにとって、事業所での職業訓練から一歩踏み出すのが職場体験。気持ちの上では社員の方並みに仕事に関わったり、コミュニケーションのトレーニングをすることで、着実に就職に向けての心構えが醸成されていることを感じます。ご家庭で実習の様子を生き生きと話す利用者さんもいるそうで、ご家族にも好評なんですよ。
――――職場訓練の委託や職場体験の受け入れを検討している企業の方へメッセージをお願いします。
佐藤さん 企業様には、CSR(企業の社会的責任)の観点はもちろんですが、障がい者の方々の能力や個性を活かすということから実習の可能性を考えていただけたらと思います。導入のプロセスでは、不安や難しさを感じることがあるかもしれません。そんな時はぜひ、私たちのような支援機関にご相談ください。利用できる機関を有効活用することで、きっと企業様と障がい者の方々の双方が幸せになる取り組みが見いだせるはずです。
――――障がいの有無に関わらず、誰もが安心して働き、活躍できる地域社会の実現に向けて、弊社も微力ながら貢献していきたいと考えています。これからも一緒に歩んでいきましょう。本日はありがとうございました。